rhの読書録

とあるブログ書きの読書記録。

人生パンク道場 / 町田康

人生パンク道場

人生パンク道場

 人生相談とはなんだろうか。

 人生に悩みを持った人が、誰かに質問する。そしてその誰かが答える。大枠で言えばそういうことである。ベリーシンプル。

 実際にその答えが悩みの解決に役立つかどうかは重要ではない。しかしだからといってどんなムチャクチャな回答でもいいというわけでもない。いや別にムチャクチャだって構わないんだけど。

 大切なのは悩みを解決することよりも、言葉のやり取りをすることであり、コミュニケーションすることなのだ。と、わかったようなことを言い切りたい気持ちもあるが、そうやってわかったようなわからないことを言うのが一番よくない。


 「人生」と「パンク」。並べてみると真逆の言葉であるようにも思える。

 そもそもパンクってなんなんだ、とか、町田康にとってのパンクってどういうものなんだ、ということを一瞬考えたくなるが、やはりそういう賢しらなことを考えるのは無意味であるようにも思う。


 さっきからこいつは何が言いたいんだ、と思われるかもしれないが、僕自身だってよくわからない。ただ思いついたことを書いているだけである。

 ただひとつ言い訳させていただくなら、僕はこの本をキチンと読んだ上で、一週間ほどいろいろ考えて、しかるのちにコレを書いているのであって、全くのデタラメを書いているわけではない。多分。

 思いつきでなにかをやる、というと、何事も計画を立てることが重要だとされている現代ではよくないことだとされがちだが、そもそも人が人生でつまづくのは、物事が計画通りに上手くいかないからだったりする。脳内で拵えた理想が現実とズレる。そこに苦しみが生じる。

 町田康は以前、「音楽を即興的に演奏することと小説を書くことは、自分の中では同じだ」というようなことを書いていた。いわばアドリブの天才なわけだ。

 人生には計画どおりに上手く行かないことが多々ある。情報は限られ、時間は無い。とっさの機転でその場をどう切り抜ければよいか、という疑問への回答者として、アドリブの天才たる町田康以上に適した人物はいない、のかもしれない。

 我々が見るべきは、回答そのものではなく、回答者としてのとっさの身のこなし、華麗なステップ、素早い切り返し、一瞬の急加速、といったような点なのではないかと思う。

 最後に、町田康は以前にも「人生を救え!」という人生相談本を出している。こちらも素晴らしいのでぜひ読んで欲しい。圧倒的、である。

人生を救え! (角川文庫)

人生を救え! (角川文庫)