- 作者: 滝本竜彦,安部吉俊
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/06/25
- メディア: 文庫
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ある種の小説は、主人公を意図的に自分よりバカになるように設定する。なぜなら自分より賢い人間を描くことはなかなか困難であるし、ボロが出やすいからだ。そして、それを無意識にやってしまっている小説は得てして愚作になることが多い。
この小説の主人公は、極めておバカというか軽薄であり、むしろ空虚ささえ感じさせる。何事にも即時的である。担任の教師に「お前は人をバカにしている」と看過される。
しかし、空虚な世界観というのは作者が傾倒している(していた)「新世紀エヴァンゲリオン」やそれに連なるいわゆる「セカイ系」とも共通している。それは目的や敵が見えない不安という時代に漂う雰囲気からくるものなのだろう。
僕の個人的な解釈から言えば、この作品が「若者」「先の見えない時代」そして「死」の関係を、極めてシンプルに描き出した点であると思う。多分同じようなことを誰かが言ってそうだけど。
そして更に大風呂敷を広げるなら、僕はそこにいとうせいこうの「ノーライフキング」との共通点を見出す。つーかそっくりじゃね?って思う。
- 作者: いとうせいこう
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/08/04
- メディア: 文庫
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文学といえば「私」「セックス」そして「死」を描いてるだけだ、みたいなことを言っていたのは大塚英志だったが、確かにそうで、結局のところ我々が興味あるものは全てその三つに収束されるのかもしれない。
「死」の一時的な脅威を乗り越えたところでクライマックスを迎えるという点でこの二つの小説は似通っているのだけれど、それは単に僕らがそういう物語を好むようにプログラムされているだけなのかもしれない。(ついでに二人の作者に断筆の期間があるという点も似ている気がする。素人考えだけれど)
それでも死を描く物語を作るのは作者に命がけの飛翔を必要とする。その点において素晴らしい。
で、この小説。んー何がすごいんだろ。なにがすごいんだろうね括弧笑い。安易なライトノベル的設定を借りつつ、安易な勧善懲悪やラブコメやファンタジーやハッピーエンドをやらないところ、かな?また、安易な隠喩や引用に頼らず日常を描けるところ、かな?不条理に対して安易な説明を求めないところ、かな?安易な答えに回収されずに、愚直に「生きる意味」を問うているところ、なんじゃないかな。