- 作者: 斎藤環
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2003/02
- メディア: 単行本
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精神科臨床医・斎藤環が、「レピッシュ(ばかげた・子どもじみたという意味らしい)に」展開させる思想・論述集。
芸術、文学、哲学、果てはおたくまで、その博覧強記ぶりは僕ら一般ピープルから見ても充分雲上人。スゴイヨセンセイ。
各論の正当性や、精神分析というもののうさん臭さはさておき、最も興味深いのはヤマギシズム批判についてだった。
ヤマギシズムがどんなものかはこの本を読めばだいたいわかるけれど、「農耕牧畜」「私有財産の供出」をモットーに、共同生活を送る、という思想である。
まぁ個人的実感から言えばその活動はカルトのそれに違いない。ヤマギシズムには絶対的指導者がいないという特徴があるけれど、「特別講習研鑽会(特講)」と呼ばれる勧誘は洗脳に近く、脱退者の多くには心的外傷等の精神的問題が残った。また、その閉鎖的空間では児童虐待が行われていたという。
ヤマギシズムでは特講の意義を「我執を捨てさせること」とする。しかし斎藤環はそれを、葛藤や神経症的な問いを捨てさせる、あるいは捨てたかのようにふるまわせるものであると指摘する。別の場所では懐疑的な自意識を抑圧しているとも述べている。*1
どういう意味か、僕の言葉で平たく言わせていただくとすれば、それは自発的な問い=懐疑を無くさせること、すなわち考えないようにさせるということだと思う。
何かを疑うこと、意味を疑うこと、自分や他人の考えを疑うことは、それほど容易ではない。行き過ぎてしまえば神経症者になってしまう…らしい。しかし、言葉を扱う以上、懐疑を捨て去ることは出来ないし、抑圧することは出来るかもしれないが。
逆に、ひきこもり症例がカルトと無縁であるのは、ひきこもり状態と懐疑の肥大に深い関係があるからかもしれない、とも斉藤は述べている。
なお、斎藤センセイと脳科学(アハアハもじゃもじゃ)の茂木センセイが往復書簡をやっていて、知とうさん臭さの大演舞会の様相を呈しておりこれもまた興味深い。とてもとてもいい。
あとこの続編と思しき「博士の奇妙な成熟」も最近刊行されたので、もうすぐ読むと思う。
- 作者: 斎藤環
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*1:[http://sofusha.moe-nifty.com/series_02/:title]