rhの読書録

読んだ本の感想など

偽文士日碌/筒井康隆

偽文士日碌 (単行本)

偽文士日碌 (単行本)


 ある意味、読みづらかった。
 旅行先としてさまざまな地名が出てくるが、地理に明るくない僕にはチンプンカンプンだった、というのが理由のひとつ。
 出てくる食べ物がイチイチ美味しそうなので、読み進めるたびに腹が減ってきた、というのがもひとつの理由。
 本として見ると、そもそもアーカイブが全て閲覧可能なウェブの連載を書籍にしたものなので、単に読みたいだけならわざわざ買う必要はないかもしれない。もちろん本の方が読みやすいけど。
 偽文士日碌
 読めば読む程「セレブだなぁ」と思う。そりゃそうだ。なんたってあの筒井康隆だよ。でも特に嫌みでもない。
 旅行に行き、ホテルに泊まり、マッサージを受け寝る、というパターンが何度あったことか。って人の生活がパターンだからってなんも悪いことはないんだけど。
 以下に己が愛煙家であるか、という話も頻繁に出てくる。僕なんかこーゆーのを読むと、タバコ、吸ってみようかな、なんて思ってしまう。影響されやすいタチなので。
 酒も飲む。もちろん上物を。ワインが苦手で焼酎を好まれるようだ。
 大江健三郎と手紙のやり取りをしていることだとか、高橋源一郎が谷崎潤一郎賞受賞式のスピーチを子ども同伴でやっただとか、そういう小説家に関する出来事もたまに出てくる。
 そもそもの話をすれば、僕は日記文学というものをほとんど読んだことがなく、これが日記文学なのかわからないし、日記文学の中で出来がいい方なのかもわからない。
 一人の老小説家が旅行先で旨いものを喰いました、という記述を面白いと感じられる人なら、全編を通して楽しめると思う。