- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/11/05
- メディア: 文庫
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誰も読んだことのない「恋愛小説」を書こうと思った。もちろん、恋愛の出て来ない小説は珍しい。ならば、「ふつうの恋愛小説」ではなく「究極の恋愛小説」を目指そう。かくして出来上がったのが、この作品集だ。「内容は?」と訊ねられたら、「タイトルの通り」と答えるしかない。思うに、「普通の」人たちこそ、もっとも恋愛に囚われているのではないだろうか。恋愛はこの世で最高の価値がある。と同時にこの世でもっとも恐ろしいものなのだ。
著者からのコメントとしてAmazonのページに載っているこのコメントを読んで、思わず深く頷いてしまった。もちろん心の中で。
それから、今日読んだ文學界2013年11月号に載っていた、高橋源一郎の連載『ニッポンの小説・第三部 第十九回』が、橋本治の小説(どの小説だったかは忘れた)についてで、その中で「ふつうの」という単語が頻出していたこともついでに付記しておく。
で、なぜ深く頷いてしまったか。それは『「普通の」人たちこそ、もっとも恋愛に囚われているのではないだろうか。』という部分について。
はっきしいって、僕、ものすごく恋愛に囚われています。はい。
恋愛したい。イチャイチャしたい。それなり以上に可愛い女の子と葛西臨海公園に行きたい。東武ワールドスクウェアには行きたくない。ディズニーランドはちょっとベタすぎるだろJK…。そんなことを日々妄想して生きている。
いや、本当のことを言うと、妄想しそうになる自分をイチイチ抑制しながら生きている。なぜ抑制するのか。虚しくなるからに決まっとるだろうが!バカチンが!
少し取り乱してしまった。いや、本当のことを言うと、この文章を書いている僕は至って平常心で真顔なのだが。
恋愛したい。でも、恋愛について考えると虚しくなるので、なるべく考えないようにしている。これはこれで、十分恋愛に囚われていると言えるのではないだろうか。
本作収録の『キムラサクヤの 「密かな欲望」 とマツシマナナヨの 「密かな願望 」』を出てくる「キムラサクヤ」や「マツシマナナヨ」は、自分自身を客観的に見ることができない、かなりダメな奴らなのだが、少なくとも恋愛という部分に関しては、僕も彼らのことを笑うことは出来ないのである。
それから、他作と同じように、本作にも著者の「AV好き」「女性雑誌好き」の面が生かされている。特に、女性雑誌「JJ」の引用が多く、読んでいると頭がクラクラしてきて、意味はわからないのだがなんだか面白い。
わかっているのについつい恋愛に振り回されてしまう人、美男美女が出る恋愛物語にはうんざりだ、という人にオススメしたい。