rhの読書録

とあるブログ書きの読書記録。

なんだかわからないけどすごく大事なことを言っているような気がする(若者よ、マルクスを読もう / 内田樹・石川康宏)

 せっかく書見台を買って書き写しがやりやすくなったのだから、引用多めにしようと思ったものの、読み終わってからどこを引用しようと思っていたのか忘れてしまった。付せんを使うか、いっそ読みながら気づいたところを逐次書き写すようにすべきだろう。こっちの話。

若者よ、マルクスを読もう 20歳代の模索と情熱 (角川ソフィア文庫)

若者よ、マルクスを読もう 20歳代の模索と情熱 (角川ソフィア文庫)

 生産諸力の発展の中で、現存の諸関係のもとでは害をおよぼすだけで、もはやなんらの生産諸力でもなくて、むしろ破壊諸力(機械と貨幣)である生産諸力と交通手段がよびおこされる段階があらわれる——そして、そのことと関連して、社会のあらゆる重荷を負わなければならないが、その利益をうけることのない一階級、社会からおしのけられて、他のすべての階級との決定的な対立を強いられる一階級がよびおこされる(182ページ)

 本書『若者よ、マルクスを読もう』に出てくる、マルクスの著書『ドイツ・イデオロギー』からの引用である。

 これを読んで、一発で意味がわかる人がいるだろうか?僕にはわからない。っていうか何度読んでもわからない。どう考えても、高校生をターゲットとした入門書の中に出てくるレベルではない。

 じゃあこの本は入門書としてダメなのかというと、そんなことは
ないと思う。

 だって、相手はマルクスなんですから。(中略)でも、この本を読んで、「マルクスには自分の知性を鍛えてくれる何かがありそうだ」——そういう予感が生まれてくれれば、私としてはたいへんうれしいです。私も学生時代に、そういう直感を入り口にして、マルクスを読み始めたものでした。(235ページ)

 と、あとがきで石川康宏氏が語るとおり、「なんだかわからないけどすごく大事なことを言っているような気がする」という感覚が、人を学びへと動機づける、ということは確かにあると思う。

 それに、この本はただ難しいマルクスの主張を並べただけの本ではない。石川氏がマルクスの著作を引用しつつその主張を丁寧に解説し、それに対して内田樹が『マルクスの「聞かせどころ」のフレーズ」をわかりやすい例とともに紹介する、というスタイルなので、難しさと面白さのバランスがうまくとれている。

 で、僕がこの本を読んで一番グッときたのは以下の部分。

 「分業は、いまや支配階級のなかでも精神的労働と物質的労働との分割として現れる。その結果、この階級内部で、一方の側が、この階級の思想家として、すなわち、この階級の自分自身についての幻想の形成をその主たる生業にする」。その結果「あたかも支配的諸思想が支配階級の思想ではなく、この階級の力とは異なる力をもっているかのような外観」が生まれる(192ページ)

 僕はこれを、支配している人ほど「おまえたちのためだ」というようなことを言いたがる、と読んだ。あるよなぁ、そういうこと。

 この本では、マルクスの本で一番有名な『資本論』をまだとりあげていないので、続きに期待したいところである。