プロスポーツ選手や、将棋・囲碁の名人が書く、勝負論・人生論というジャンルの本が、一定数存在する。最近では、サッカー選手の長谷部誠の『心を整える。』がベストセラーになったりもした。
- 作者: 長谷部誠
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/03/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分は今まで、そういった類の、書いた人のネームバリューありきの本には、あまり興味が無かった。しかし、プロゲーマー・梅原大吾が書いた、『勝ち続ける意志力』という本を読んで以来、その種の本に対する見方がちょっと変わってきた。
勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」/梅原大吾 - 思考だだ漏れノート
- 作者: 梅原大吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/04/02
- メディア: 新書
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ウメハラ、と愛着を持ってそう呼ばせてもらうが、彼の本の素晴らしいところは、内容以前に、嘘偽りがないところである。自分をカッコよく見せようというような衒いが無い。あくまでも、自分の人生や勝負を通して感じたことや考えたことを、率直に語ろうとしている。だから読んで面白いし、心動かされる。
で、大分話が逸れたが、色川武大。
- 作者: 色川武大
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/11/30
- メディア: 文庫
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この『うらおもて人生録』、確か他の作家が紹介していたのを読んで、図書館で手に取ったのが数年前だったと思うのだが、その時はなんとなく合わなくて最後まで読まなかった。読めなかった。
それがつい先日、本屋で見つけて裏表紙の解説を読んだところ、これが一種の勝負論・人生論であるとわかったので、買って読んだのである。そして、たいそう面白かったのである。こういうことがあるから読書はやめられない。
読んでみてわかったのだが、この本、ものすごく奥が深くて、つかみどころが無いような、つかみどころが多すぎて困るような、そんな感じなのである。なんだかマヌケな感想になってしまったが、実際にその通りなのだから仕方がない。
一章ごとに一つの「セオリー」について書かれる、というスタイルで進んでいくのだが、一つ一つのセオリーが、「ん?」と疑問を感じるような、それでいて「確かにそうかもしれないな」と思わされるような、「だとしたらあの時のアレはああだったのかもしれない」と身につまされるような、滋味に富んだ料理のような具合なのである。
そんなセオリーが、55章も並んでいるのだから、読むのに大変時間がかかった。
一つ面白いと思ったところは、「眺める」ということについての話。
ばくちを始めたころ、少年だった著者は、ひたすら大人がばくちを打つのを眺めていたという。また、ばくちから足を洗って小さな出版社に入った当初も、自分を出さず会社や社員の様子を眺めることに徹した。
そのように、ひたすら観察することを、ばくち用語で「見(けん)」と言うらしいが、上に書いたウメハラの本にも同じようなエピソード(麻雀を始めたウメハラは、強いと思った先輩の打ち手を一日十時間でも見続けていたという)が出てくるのである。
勝負について書かれた本をよく読むというウメハラが、「雀聖」と称されるほど麻雀界で有名な色川武大の本を読んでいた可能性は大いにあるが、もしこれが偶然だとしたら、それはそれで面白い話である。
と、半分くらいウメハラの話になってしまったが、実際、ウメハラ好きの人が読んでみると面白いかもしれない『うらおもて人生録』。もちろん、そうでない人が読んでも、何かしらの示唆を得られることは間違いない。まさしく名著である。