rhの読書録

とあるブログ書きの読書記録。

国民のコトバ/高橋源一郎

国民のコトバ

国民のコトバ


 まず表紙を見る。ラインストーン(?)でデコッてある。著者名が書かれているのはマカロンであろうか。余談だが僕は、マカロンというお菓子をふんわりした食感だと思っていたのだが、実際はサクサクしているらしい。
 これらが象徴しているのはなんであろうか。おそらくギャル、であろう。そしてその大本としてのヤンキー文化であろう。ヤンキーは、日本という国に置けるドミナントな文化であると言っていい。『国民のコトバ』という本の表紙のこのデザインを持って来たセンス。素晴らしい。
 そんな本書は、日本にある様々な、本当に様々な「コトバ」を取り上げ、一つづつ丁寧に追っていく。どうせなのでテーマを列挙してしまおう。「もえたん」「官能小説」「相田みつを」「Siri」「VERY(女性向け雑誌)」「幻聴妄想かるた」「漫F画太郎版(!)罪と罰」「MEN'S KNUCKLE(ガイアが俺にもっと輝けと囁いている)」「石坂洋次郎」「現代短歌(でいいのか?)」「ケセン語訳新約聖書」「真木蔵人」「ゼクシィ(結婚情報誌)」「こどもの詩」「オトナ語」。
 言葉というものについてなにかを考えようとした時、普通、偉い文学者の先生は、最新のゲンダイブンガクを取り上げたりする。また最近では、マンガ・アニメ・ライトノベルなどのオタク文化を取り上げるのも流行っているらしい。
 でも、そういうのってなんか偏ってるんじゃないか、と思った高橋源一郎が、なるべく偏りの無いような、いや、正確に言えば、より様々な方面に向かって偏った「コトバ」たちを取り上げようとして出来上がったのが、本書なんじゃないかと、ワタクシは想像するのである。
 それってもしかして、ものすごくすばらしいことなんじゃないか?と思う。もっとみんな話題にすべきなんじゃないか?と思う?はてなブックマークばっかり見てる場合じゃないんじゃないか、俺よ?と思う。
 一つ指摘しておかなければならないとすれば、本書の中で著者は、簡明平易な語り口で「ことば」について解説しているのだが、そのスキマに、こっそりと政治的な主張をすべりこませているのである。そのへん、上手いな、と思う。
 全編に通底しているのは、コトバに対する愛、なのであろう。確かに、言葉は時に厄介である。「♪コトバハ オレヲシバル〜」と歌っていたのはスティングだっただろうか。そして言葉は時に人を傷つけ、人を孤独に陥れたりする。そういえば、朝日新聞が「それでも私たちは信じている、言葉のチカラを」というキャンペーンでCMをうっていたが、「お前が言うな」と思ったのは僕だけではなかろう。
 だいぶ話がズレたが、朝日新聞風に言えば、「それでも私たちは言葉を愛している」のである。厳密に言えば、否応無しに愛さずにはいられないのだと思う。あとがきで著者は言う。

 あなたが誰かを好きになったとしたら、それはたぶん、その人の中に住んでいる、この国のことばが好きになったのですよ。ほんとに。

 まったくもって、という他に無い。