rhの読書録

読んだ本の感想など

心が雨漏りする日には / 中島らも

 中島らもという人をどう考えるべきか。正直に言ってまだよくわからない。

 ジャンキーで、アル中で、そして類まれな名文家。それが現時点における自分にとっての中島らも像である。

 クスリでラリる。酒に溺れる。それは自分自身を破壊することに他ならない。誰もが何かにある意味で依存しているとも言えるわけで、例えば宇宙人の目から人間を見たら、クスリや酒にハマることと、アニメやゲームにハマることはそれほど違わないのかもしれない。

 でもやっぱり僕らは人間なのであって、人間から見たらクスリや酒は自己破壊に他ならず、自己破壊をしている人間を受け入れる度量を少なくとも今の僕は持ち合わせていない。


 というようなことは、本書『心が雨漏りする日には』を読む前から思っていて、読んでから再び考えてみたけれどやっぱり結論は出なかった。でもつい読んじゃう。面白いから。

心が雨漏りする日には (青春文庫)

心が雨漏りする日には (青春文庫)

 中島らもが半生を振り返る自伝的な本で、発行が2002年、亡くなったのが2004年なので、「晩年」の自叙伝とも言える。

 内容的にはWikipediaの経歴欄をそのままなぞったような感じ。というかWikipediaの方が、多分にこの本を参考に書かれているのだろう。

 しかしそこに載ってない話もある。中島らもの父親にも躁病の気があったこととか、中島らもがうつ病になって以来かかっていた精神科医が精神に異常をきたして去ってしまった話とか、その精神科医が処方してくれていた薬をやめたら、かすみ目、フラつきなどの症状がなくなったことだとか。

 タイトルからもわかるとおり、闘病記としての側面が強く、死の瀬戸際まで行った話も出てくるのだが、全編彼特有のあっけらかんとしたユーモアたっぷりの口調で書かれており、読みながら思わず吹き出してしまうこともしばしば。心の病も悪くないのではないかとさえ思えてしまう。

 おそらくそのへんの暗くて重い話は、夫人の中島美代子氏が書いた本に詳しいのではないかと思われる。僕はまだ読んでないけど。

らも 中島らもとの三十五年 (集英社文庫)

らも 中島らもとの三十五年 (集英社文庫)