rhの読書録

読んだ本の感想など

のはなしし / 伊集院光

 あっさりしていて笑える本を読みたいな、と思って本屋に行ったら目に留まった『のはなしし』。この本が発売していたこと自体はTwitter経由で知っていたのだが、店頭に並んでいるのを見て初めて今の自分の読書欲にピッタリフィットしていることに思い至り、購入。こーいうことがあるのが本屋に行くメリットの一つである。

のはなしし

のはなしし

 この本は、伊集院光のエッセイ『のはなし』の四冊目。『のはなし』というタイトルの意味は、著者名と続けて読むと「伊集院光のはなし=伊集院光の話」になる、という、シンプルだが説明しようと思うと意外と難しい由来だったりする。

 ではなぜ僕がそれを知っているかというと、『のはなし』が発売する頃にラジオ『伊集院光 深夜の馬鹿力』を毎週欠かさず聴いていたからで、その流れでのはなしの続巻に当たる『のはなしに』『のはなしさん』も全て、読了済み。

 上で「聴いていた」と書いたのは、今現在はほぼ聞くことが無くなったからで、なぜ聴かなくなったのかという原因は自分でもよくわからないのだが、おそらく深夜ラジオ特有のアクや毒を身体が受け付けなくなったから、ではないかと思う。なのでタレントとしての伊集院光は未だに好きなまま。

 前巻であるのはなしさんが出たのが四年ほど前、ということを知り、月日の流れの早さを感じつつ読んだが、相変わらずの面白さ。話芸の達人である伊集院光の「語る力」が遺憾なく発揮されている。あるときは笑わされ、あるときはハッとさせられる。名人芸である。

 一つのエッセイは1500〜2000文字程度だが、キチンとオチがあって、小噺として成立している。また「かつて深夜の病院の前にラーメン屋の屋台がいることが多かったのは、病院食の薄味に飽きた患者が食べに来るから」というような、雑学に通じている彼ならではの話も多く、フツーにタメになる。

 ラジオでよく言っていたことだが、伊集院光は何事によらず一度やり始めると細かいところまでこだわりすぎてしまう性格らしく、読んでいて細かい表現まで気を配って書かれていることが伝わってくる。ちょっと気にし過ぎかな、と思うところもないではないが。

 読むと楽しくなり、少し心が暖かくなるという、エッセイの理想と言ってもいい出色の本。テレビでのクイズタレントとしての伊集院光しか知らない人はもったいない。ぜひ、読むべし。