- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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穂村弘のエッセイが面白い、と、俺の中で話題になり続けている。
とにかく、面白い。どれを読んでも、面白い。異常なことである。異様なことである。
穂村弘は、いろいろなことにこだわり、いろいろなことにつまずく。そのひとつひとつに、共感してしまう。同意できるかどうかは別として。
内容そのものは、はっきり言ってどうでもいいことが多いのだが、そのどうでもいいことにクローズアップする強度がすごいので、なにか人間存在の本質に肉薄しているように感ぜられる。「人間存在」ってなに?という疑問は置いといて。
そしてほんのすこしだけ寂しく切ない気分になる。過ぎていった時間を思うときのような、甘く苦い切なさ。でも不愉快ではなく、むしろクセになる。
そこには、「孤独の寂しさ」が関係しており、それは「男であることの寂しさ」とも繋がっている気がするが、ほんとうのことはわからない。
ゲームや映画や小説には、様々な人物が登場し、とてつもない冒険を繰り広げたり、あるいはどうでもいい日常を過ごしていたりして、その様々な人物に感情移入することもできるが、ふと我に返ると自分は自分に戻っている。そして自分生まれた時から自分であり、未来永劫自分である。
ときどき、そのことが不公平であるように感じる時がある。なぜ自分は自分なのか。自分じゃなくてもいいじゃないか。いや、よくないけど。
どんなにお金を持っていても、英雄にはなれない。どんな美女でも、美男子になることは出来ない。あたりまえのことなのだが、そこでは何かが損なわれているように錯覚してしまう。
そんな不公平の感覚が、呼び起こされるように感じる。穂村弘のエッセイを読んでいると。