rhの読書録

とあるブログ書きの読書記録。

本当はちがうんだ日記 / 穂村弘

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)

 穂村弘のエッセイが面白い、と、俺の中で話題になり続けている。

 とにかく、面白い。どれを読んでも、面白い。異常なことである。異様なことである。

 穂村弘は、いろいろなことにこだわり、いろいろなことにつまずく。そのひとつひとつに、共感してしまう。同意できるかどうかは別として。

 内容そのものは、はっきり言ってどうでもいいことが多いのだが、そのどうでもいいことにクローズアップする強度がすごいので、なにか人間存在の本質に肉薄しているように感ぜられる。「人間存在」ってなに?という疑問は置いといて。

 そしてほんのすこしだけ寂しく切ない気分になる。過ぎていった時間を思うときのような、甘く苦い切なさ。でも不愉快ではなく、むしろクセになる。

 そこには、「孤独の寂しさ」が関係しており、それは「男であることの寂しさ」とも繋がっている気がするが、ほんとうのことはわからない。



 ゲームや映画や小説には、様々な人物が登場し、とてつもない冒険を繰り広げたり、あるいはどうでもいい日常を過ごしていたりして、その様々な人物に感情移入することもできるが、ふと我に返ると自分は自分に戻っている。そして自分生まれた時から自分であり、未来永劫自分である。

 ときどき、そのことが不公平であるように感じる時がある。なぜ自分は自分なのか。自分じゃなくてもいいじゃないか。いや、よくないけど。

 どんなにお金を持っていても、英雄にはなれない。どんな美女でも、美男子になることは出来ない。あたりまえのことなのだが、そこでは何かが損なわれているように錯覚してしまう。

 そんな不公平の感覚が、呼び起こされるように感じる。穂村弘のエッセイを読んでいると。