- 作者: 中島らも
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1997/09
- メディア: 文庫
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以前、ほんの少しだけ、小説を書いたことがある。
小説、と言っても、数行から数十行程度の、小説のなりそこねみたいなものだったけれど。
それらはmixiで身内のみに公開したり、古い大学ノートの中で眠っていたり、あるいはハードディスクをアレコレしているうちに電子の海に消えてしまったりしている。今さらそんなものを公開しようというつもりはない。
この小説、「永久も半ばを過ぎて」の中では、「小説を書くことは、霊に憑依されるようなものだ」というようなセリフが出てくる。
ほんの少しだけ、わかるような気がする。
別に「物語が天から降りてきた」というような経験があるわけではないし、そもそもそんな言い回しに意味があるとも思えない。
ただ、物語、つまり作り話をしようという時に、素でいることは、すなわち平常通りの心理状態でいるのは、なかなか難しいことなのではないかと思う。そもそも物事を常識的に考えていたら、小説などというものは書きようがないのではないか。
意識が通常でない状態を「憑依された」と形容するならば、けっこうしっくりくるような気がする。
この小説の中には、憑依されたように小説を書く写植屋と、憑依されたように人を騙す詐欺師が登場する。
中島らもが自らの創作行為を憑依になぞらえてこの小説を書いた、のかどうかはわからないが、本書を読んで創造と表意の関係について少し考えてみるのも面白いかもしれない。