- 作者: 武田砂鉄
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2015/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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どうにも、読むのがしんどかった。でも、結局全部読んでしまった。
そして今、この本について書くのもしんどい。それでも書きたい。なぜこの本が、しんどくて、面白いのかを。
紋切型の言葉にはどんなものがあるだろうか?
と、あらためて考えるまでもなく、世の中には紋切り型の言葉があふれている。「遺憾の意」とか。「今後のご活躍をお祈りしております」とか。
紋切り型の言葉を使うことには、コミュニケーションをスムーズにする、というような、正の面もある。
しかし、今の日本には、紋切り型の言葉を、思考を放棄するため、あるいは思考を放棄させるために使っているような場面が、あまりに多すぎるのではないだろうか?
というのが本書の問題提起である。
批評、というより、単なる悪口や皮肉ではないか、と思いたくなるような話も出てくる。だから読むとぐったりしてくる。
しかしその悪口や皮肉は、誰かを攻撃するためのものではなく、世の中の間違ったことを、「それは間違っている」と指摘するための、必要悪であるように思えて、だからこそ最後まで読む必要があるな、と感じて、最後まで読んだのだった。
間違っていることを間違っていると指摘すると、白い目で見られる、ということは、時代を問わずに常にあることだ。戦争反対と口に出しただけで社会的に抹殺されてしまうような時代があり、その後で、戦争反対と言わなければ社会的に認めてもらえないような時代があったりした。
誰だって本当は、間違ったことなんかしたくない。でも一歩世間に出れば、みんなが「正しい」と言うことが正しいことだ、というような、根拠も理屈も議論も無い「正しさ」が、様々な場面に現れる。
そんな根拠無き「正しさ」に向き合い、裸の王様に「裸だ」と言い、しかも己が無事でいるためには、高度な知性と勇気が必要となる。本書の著者には、その両方が備わっているように見える。