- 作者: 川崎大助
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/08/20
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (2件) を見る
日本のロックアルバムに順位をつけて、ベスト100から並べた本。各アルバムについての数百字のコメントあり。
二部構成となっており、一部がベスト100の紹介、二部が「米英のロックと比較し検証した日本のロック全歴史」というタイトルで、著者が日本のロック史を俯瞰し分析した文章が載っている。
日本の戦後史と日本ロックの歴史を重ねて見ようという著者の試みはなかなかに面白い。
歌謡曲→ニューミュージック→Jポップと、何故か日本の音楽業界では妙な造語が作られ続けていった、という話も興味深かった。
しかし「心理学的手法でを社会を分析する」的な、大づかみすぎるような印象が多少無いではなかった。
日本のロック雑誌は、アーティストを褒めることはあるが、けなすことはあまりないらしい。
だから今まで、日本のロックアルバムに順位をつける、というような、各方面に角が立つようなことをする人がいなかった。
だったらオレがやってやろう、というのがこの本を作った動機だという。
ロック、な感じがする。
ロックって、なんかかっこいいな、と漠然と思って生きてきた。
ロックって一体なんなんだろう?という疑問も、ずっと抱き続けてきた。
本書を読めば、ロックの歴史について知ることはできる。
黒人音楽。ロカビリー。エルヴィス・プレスリー。チャック・ベリー。そのようなルーツ。
しかしそれでもなお、あの頃感じた「ロックってなんなんだろう」という漠然とした疑問は残り続けている。
ロックはカッコイイ。でもJポップはカッコワルイ。そういう風潮の中で育ってきたのが僕らの世代だ。
なぜJポップはカッコワルイのかと言えば、ロックじゃないから。
思うにあの頃は、「カッコイイ」と「ロック」は同じような概念だったのかもしれない。
欧米のものはカッコイイ、とされており、ロック音楽もまた、その中に含まれていた。そしてその「欧米のもの=カッコイイ」という図式は、今もある程度続いている。
見ようによっては、日本は欧米の、というか英語圏文化の文化的属国であるとも言える。今も僕はローマ字入力でブログを書いている。
ロックを聴くことは、欧米に隷属することになるだろうか?
おそらく戦前の日本人が見たら、隷属していることになるだろう。
しかし日本人は、ロックを「和訳」することで、あるいは最近の言葉で言えばガラパゴス化することで、文化的な侵略に対して抗ってきたのではないか、という印象を、この本を読んで受けた。
文化的侵略の目的は、支配することではなく、搾取することである。端的に言えば、お金を儲けていい思いをすることである。
敵と味方に別れて一対一、というような単純な構造ではない。あらゆる戦いは局所戦である。
どこかに悪玉がいて、そいつの指示で全部動いているんだとしたら、その悪玉を倒せば済むだけの話だ。でもそうではない。
だからこそ、アルバム100枚という「物量」が必要なのかもしれない。いや、自分で言ってても理屈がよくわからんけど。
と、いうようなことを著者が言いたいのかどうかは知らないが、本書が日本のロック史について知りたい人にとって参考になる本であることは間違いない。