rhの読書録

とあるブログ書きの読書記録。

ゴールデンカムイ(連載版)を読んだ感想

 「となりのヤングジャンプ」で無料開放していた漫画『ゴールデンカムイ』。一週間くらい前に2日がかりで全部読んだ。

 あれだけの作品なので咀嚼するのに時間がかかったが、そろそろかるーく感想を書きたい。



 アイヌ文化に材を取りつつ、財宝を巡るスペクタルや、変態すぎて魅力的すぎる悪役、狩猟文化ならではのグルメなどを多面的に描いて読み応えが抜群。

 勧善懲悪要素がやや薄く、登場人物それぞれがそれぞれの利益のために動いている。そのバランス感覚がいっそ気持ちいい。

 終盤のカタルシスも見事。強いて言えば杉元と鶴見中尉との決着にはもうちょっと因縁とその解決があって欲しかった。因縁ありまくりのアシリパと比べると「道中でさんざん苦しめられた」くらいの印象しか個人的には感じなかったので。



 上手いな、と感じたのは例えばアシリパの成長の描写として「正座をして話し合う」姿を描いたところ。実際に明治時代のアイヌの描写として正しいのかはわからないが絵的にすごくわかりやすい。

 アシリパの父の徹底した「目的至上主義」とでも呼ぶべき行動も強く印象に残る。

 決して悪人ではないが終始やっていることがエグすぎてどちらかというとサイコパスな印象が強い。瞳孔が開いた目がヤバさを物語っているよう。



 ひとりひとりの過去から行動原理を描くスタイルは鬼滅の刃に似ている。図らずも時勢に合致してしまったあたりも共通している。まだまだ人気が出そう。

 これだけのスケールと多面性を持った作品なので、単一の主義主張だけを取り上げようとするのは不適当だと感じる。まぁ、あらゆる優れた作品はみんな同様なんだけども。