昔、リゾルトのジーンズ「710」を履いていたことがある。家族が筋トレしすぎて足が太くなって履けなくなったのでお下がりで貰った。
めちゃくちゃ履きやすかった。当時はリーバイス501ばかり履いていた(古着屋でヴィンテージではない安いものを探して買っていた)のだけれど、710はとにかくよく足に馴染んだ。毛羽立った生地の味わい。当時の501には無かったセルビッジによって浮き出るアタリ。しっかりしているのにゴツくなりすぎず、テーパードされたスッキリとしたシルエット。決して主張はしないが、履き込むほど「自分のもの」になっていく。不思議なジーンズだった。
それが今では気がつけばジーンズ自体を履かなくなり、最近はセールで買ったチノパンばかり履くようになってしまっている。
そんな体たらくの日々の中、リゾルトのデザイナーである林芳亨氏の著作を発見したので、昔を懐かしみつつ手に取った。
80年代後半にジーンズブランド「ドゥニーム」を立ち上げブームを作り、その後独立し新たに「リゾルト」をスタートした著者。
あえて4種類のモデルしか販売しないリゾルトのラインナップ紹介から(つい先日、新たなジーンズ1種とシャツブランドの展開を発表した模様)、デザイン上のこだわりと販売戦略、リゾルトの原型となった「リーバイス501」や日本産ジーンズの歴史、ドゥニーム設立とそこに至るまでの個人史まで、大阪弁を交えつつ軽快に、そしてジーパン愛を込めて語られていく。
織り方や染め方まで当時を再現したデニム生地、リベットやボタンといったパーツの細やかな形状、縫製の機械など、あらゆる細部にこだわり、また日々の変化に対応し続けることで、理想の「ジーパン」が出来上がる。並々ならぬバイタリティと情熱あってのことだろう。
いわゆるレプリカジーンズは、リーバイス501、それも特定の時代の501の良さを復元しようというもの。
なぜリーバイス501なのか? という単純にして深遠な問いについて自分も考えてみたけれど、そう簡単に答えが出るはずもなく。ファッションとかマニアのこだわりってそういうものでしょ、と言われればその通りなのだけれど。
それはそれとして、ただリーバイス501のマネをしただけでは、新たな価値は生まれない。
リゾルトの良さは、大人の上品さと、飽きの来ないシンプルで昔ながらのデザイン。
さらに同じモデルを継続して扱うことで、客が安心して長年愛用できる販売形態。
そして「たかがジーパン」という言葉に表されるように、「ジーパンは履いて洗って使うもの」というスタンスを、創業からブログやインスタグラムで発信し続けてきたことにあるのだろう。新品を買って履き込む喜びはヴィンテージでは味わえない。良いものを売り、その使い方も提案する。作り手の顔が見えるものづくりの良さ。
などと、最近すっかりジーパン離れしてしまった身ながら思う。いつかまた履きたいなぁ。