rhの読書録

読んだ本の感想など

思い込む力 / ネモ(根本直樹)

 格闘ゲーム好きで読書好きな自分としては、プロ格闘ゲーマーが書いた本を見かけると反射的に手にとって読んでしまう。これまでもウメハラ選手やときど選手の本を読んできた。

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 本書の著者はネモ選手。ギルティギアシリーズでは強豪ファウスト使いとして「ギルティはネモと小川のゲーム」と称えられ、ノヴァ・ストレンジ・スペンサーのチームで当時アメリカ一強だったUMVC3界に新風を巻き起こし、スト4シリーズからは社会人兼業プロゲーマーとして独自の存在感を示し、国内のリーグ戦「ストリートファイターリーグ」で長らくリーダーを務めている、あのネモ選手である。



 本書の中心には、いかにしてプロゲーマーと会社員を両立したかという経験が置かれている。スポンサーを獲得するため自らプレゼン資料を作りこみ、イベントなどで各企業に売り込みをかける一方、勤務先の会社内ではプロゲーマー活動を認めてもらえるよう上司にかけあうなど、とにかく行動力が凄まじい。特に人と直接掛け合うことを重視しており、「人に会う=死」みたいな自分のような人間には到底マネできない。 

もう1つのベースになっているのは行動です。自分なりにある程度分析して考えたら、とっとと行動します。一番は人に会いに行くこと。eスポーツ市場はもっと大きくなりそうだなとか、この会社ならスポンサーになってくれそうだなという情報収集はもちろん自分でしますが、最終的には人と話してみるしかないというのが私の考えです。

 キャリアアップを望む会社の方針と相容れなくなってからは転職活動を行い、スクウェア・エニックスに入社。イベント運営やソーシャルゲームの運営に携わって業績を上げつつ、プロゲーマーとしても着実に実績を積んでいった。

 そしてコロナ禍を機に専業プロゲーマーへ転向。現在はプロ活動のかたわら、eスポーツのコンサルティング業も手掛けているという。

 本書の出版は2022年だが、2025年現在も『ストリートファイター6』のリーグ戦で「Saishunkan Sol 熊本」リーダーを務めており、現役バリバリである。


 eスポーツの注目が高まっているここ数年。でもいまだに「プロゲーマーって何?」という人も多いだろう。

 今のところ、プロゲーマーといえども、チームに所属して試合に出場するだけで生計が立てられるとは言い難い。そもそも一般的なスポーツ界においても、専業で活動可能なのは一部のメジャースポーツだけだろう。

 大会の賞金も限られており、トップクラスの規模のタイトルにおける年に1、2回の大規模大会に優勝して、ようやく個人の賞金額が億に達する、というレベル。

 個人またはチーム単位でスポンサーを獲得し、それに見合う宣伝や露出活動をしなければ、専業プロとしてやっていくのは難しい。昨今は動画投稿や配信を行う、いわゆる「ストリーマー」的な活動を行うプロゲーマーも多い。

 またプロ活動はゲームメーカーによる後援が無ければ成り立たない。メーカーが大会を開いたり、宣伝イベントに呼んだりするおかげで、プロという活動形態が存在できている。逆に言えばゲームメーカーが立ち行かなくなればプロとしての活動基盤も危うくなる。

 そんな現況で「兼業プロゲーマー」やコンサルティング活動の経験を持つネモ選手の立場は、実に貴重なものと言える。

 例えば子どもが「プロゲーマーになりたい」と言い出したときには、まず本書を親子で読めば、将来を考えるうえで大いに役立つだろう。



 なぜネモ選手は兼業プロゲーマーの道を目指したのか? それは「大人になってもゲームを続けられることを証明したいから」だという。

大人になって、仕事をするようになったらいつまでもゲームは続けられないのか? 上司の言葉を機に考える中で、「そんなことはない。社会人になってもゲームは続けられる」ということを自分で証明したいという気持ちが湧いてきました。私がそういう空気を変えたいとも思うようになったのです。

 対戦ゲームの魅力は人と人を繋ぐこと。特にゲームセンターで顔を突き合わせて対戦していた世代のプロゲーマーはみな一様にそう語っている。eスポーツが発展していってもそういう魅力は無くなって欲しくないと、個人的には願っている。