rhの読書録

読んだ本の感想など

荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方 / 荒木飛呂彦

 昔、『ポンキッキーズ』という子供番組で流れていた楽曲に「ピカソもダビンチもいいかどうかは自分で決める」という歌詞があった。それが「芸術家たるもの、自らの感性・審美眼に忠実であれ」というメッセージだったことに、当時子どもだった自分は全然気づかなかった。

 そのような意味において、漫画家、荒木飛呂彦もまた、紛れもない芸術家だ。面白い漫画とはなにか。それを「自分で決め」ている。

 ただ「自分自身にとって面白い漫画」を作るだけでなく、「読者にとって面白い漫画とはなにか」を追求している。岸辺露伴のように。ゆえに少年漫画のワクを飛び出した、しかし誰が読んでも面白い漫画を描ける。そんな漫画家としての「覚悟」と「スゴ味」を、本書を読むことで垣間見ることができる。

 登場キャラクターの身上調査書を書いてそこからストーリー展開をふくらませる。そちらの方がいいと判断したら、太ったキャラクターを次の登場シーンで細マッチョに描きかえたっていい。そんな創作論から、健康に気をつける、褒めてくる人を信用しない、節税などに労力を割かずキッチリ納税して漫画に集中する、など漫画家としての心構えまでをレクチャーしてくれる。

 タイトルにある、悪役の作り方が本書の中心にあるのだけれど、悪役の設定を考えているときの荒木先生はどうにもイキイキしているように見受けられる。どんな能力でどんな悪さをしてやろうか、と知恵を働かせる様はまるで悪ガキのようでもある。だからこそディオや吉良吉影のような全く別ベクトルの悪のカリスマを描くことができるのだろう。

 『岸辺露伴は動かない』の登場人物「泉京香」は作品における悪役として描かれているとのこと。確かに毎回、無自覚なトラブルメーカーとして岸辺露伴を窮地に追い込んでいるが、読んでいて悪役だとは思いつきもしなかった。さすが、常人とは発想が違う。