rhの読書録

読んだ本の感想など

安全な妄想 / 長嶋有

安全な妄想 (河出文庫)

安全な妄想 (河出文庫)

 妄想、というと、くだらないものだ、と思いがちである。

 実際には、必ずしも全ての妄想がくだらないわけではない。大抵の妄想がくだらないものであることは間違いないが。しかし、別にくだらなくたって構わないのである。だって妄想なんだから。自由だから。

 妄想、というとくだらなく聞こえるが、イマジネーション、というとちょっとカッコよく見える。イマジネーションの翼を広げて、なんつって。

 長嶋有は、妄想の翼を広げる。妄想の翼で、「飛行機の一部が女」というような、なんだかよくわからない空まで飛んで行く。そしてその様はいちいち愉快で小気味いい。

 妄想することは、現実を違った目線で眺めること、とも言い換えられる。ともすればそれは、批評的態度、という文学に欠かせない態度にもなりうる。あくまで、なりうる、というだけであって、なるべき、というわけではない。妄想はあくまで自由なものだから。