rhの読書録

とあるブログ書きの読書記録。

アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術 / Tak.

アウトライナーとの出会い

 『勉強の哲学』という本を通してアウトライナー(アウトライン・プロセッサー)というツールの存在を知った。
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 そこからかれこれ6年ほど。特に理由もなく離れる時期があったりしつつも、なんだかんだでアウトライナーを使い続けている。使っているのは「Dynalist」。

今までのアウトライナーとの付き合い方

 元々はアウトライナーを「ブログ記事の作成」「日常のメモ」「ゲームの攻略を自分用にまとめる」などの用途で使っていた。

 先月くらいからアウトラインの運用を改め始め、今月に入ってからは「全てのアウトラインをひとつのファイルで管理する」という「アウトラインの一本化」運用を始めた。割といい感じだけれどこのまま続けるかはわからない。

 そうしてアウトライナーについて考える中で、『勉強の哲学』で参考文献に挙げられていた本書の存在を思い出し手に取った。

 そのような自分にとっては示唆の多い本であった。長年使っていても気づかなかった、新たなアウトライナーの活用法を知ることができた。

 アウトライナーには実に様々なメリットがある。どうやら、というか、やはり、と言うべきか、自分はそのうちの一部しか引き出せていなかったらしい。

 もっと早く本書に出会っておけばよかった気もするが、自分なりの使い方を確立する時間もそれはそれで無駄ではなかったようにも思う。

アウトライナーを使うメリット

 アウトライナーとは、ごく簡単に説明するのであれば、箇条書き形式のテキストエディタである。

 始めてアウトライナーを使う人は、ただ文頭に「・」がついているだけの文書作成ソフトにしか見えないかもしれない。

 しかしこの「・」があるおかげで、「しっかりした文章を書かなければいけない」という意識から少しだけ自由になれる。

 箇条書きのように、頭に浮かぶオブジェクトをそのまま書き出してみよう、という気分になりやすいからだと思う。

 そしてこの「・」を掴んで移動することができる。(マウスならドラッグ、タッチパネルならタッチ長押し移動)

 普通のテキストエディタであればコピー&ペーストが必要なところも、「・」すなわちトピックごとの移動であればより簡単に行える。

 さらにトピックに階層行動をつくったり、トピックを閉じて下位のトピックを隠したりすることができる。

デジタルが手軽にしてくれたツール

 一見すると「そういうこともできるのね」くらいに見える機能だが、仮に同じことをアナログでやろうとするとどれほど手間がかかるかを想像してみると途方もない。

 思いついたことを紙のカードかなにかに書く。それを机の上に並べ替える。大量の紙と広い机が必要だ。カードの内容を2つに分割しようと思ったらまた新たにカードを2枚用意する必要がある。

 そのような仮にそんな並べ替えをしたとしても、一覧性は悪いし、持ち運ぶことなど到底できない。

 なによりそんな大仰なことを、金と時間をかけてやることじたいが億劫だ。本を一冊書き上げるとか重大な調べ物をするとか、それくらいの動機づけがなければできることではない。

 しかるにアウトライナーであれば、そのような知的操作を簡単かつ気軽に行える。ちょっとした買い物のメモにすら、アウトライナーは使えるのである。デジタル時代のありがたみ。

 そんな便利なアウトライナーを、自分はせいぜい「便利なテキストエディタ」や「便利なメモアプリ」くらいにしか使えていなかった。

 本書の実践法を学んだことで新たなアウトライナーの活用ができるようになるかもしれない。

これまでの自分の文章の書き方

 自分が文章を書く時は、頭の中で全体の構成をぼんやり考える、というか自然にぼんやりとした構成が組み上がるのを待ち、イケるなと思ったらなるべく一気に書き出す、というスタイルが主。

 短いブログを書くならそれで事足りる。ごくまれにもっと長い文章を書くことになると気があり、そういう時は書きながら構成を作ることもある。

 難しめの小説の感想を書くときだけは例外で、思いつくことを頭から順番に書いていって、結果的に構成が出来上がるのを祈る、みたいなことになりがちだったりする。

 すでに頭の中にある構造を書き出す感じなので、自分にとってアウトライナーはせいぜい「便利なテキストエディタ」くらいのものだった。

 階層構造はほぼ使わない。並べ替えも、まれに「こことここを入れ替えたほうがピッタリハマるな」ということがあるくらい。

実際に本書の技法を実践した感想

 今回この記事を書くにあたって、階層構造や並べ替えを意識的に使うようにしてみている。

 「シェイク」や「トップダウンとボトムアップ」の往復。アウトライナー操作の5つの型。それらを意識して書いてみた。実際にできているかどうかは別として。

 文章構造をわかりやすくするためにつけた仮の見出しをあえて残してみた。階層構造もそのままにしてもよかったのだけれどさすがに読みづらそうなのでやめる。

 正直に言うと、時間がかかって大変だった。文章の並べ替えを細々やることに意識を持っていかれて、なかなか書くことに集中できない。

 これらはおそらく単に自分が慣れていないがゆえのことだろう。もっと長大な文章を書くためには多かれ少なかれこのような作業が必要になるわけで、それに必要な能力が自分に足りていないのかもしれない。

 普段は脳内でやっている文章の構成化を手元でやっているような感じがする。頭の中のことを可視化できているとすれば、それはよいことかもしれない。

アウトライナーは文章作成以外にも利用できる

 メモ。日記。日誌。アイデア帳。日常の中で出てくるあらゆる「ことば」を、ひとつのアウトラインに放り込む。

 本書ではそのような運用法を「ライフ・アウトライン」と呼んでいる。

 自分が「アウトラインの一本化」を行ったのも、そのような運用法を目指してのことだった。

 それまでは使う度に新しいファイルを作っていた(Dynalistには、Workflowyなどには無いファイル機能がある)。まっさらなところから始めたほうがやりやすい感じがして。

 ひとつのアウトラインに日記もメモもブログの下書きも全て放り込む運用をすると、メモとしての使い勝手は劇的に向上した。

 とりあえず思いついたこと、覚えておきたいことを全部アウトラインに放り込んでおいて、後で整理すればいい。このことに気づいた時は、ほとんど革命と言っていいほどの、自分の中の「アウトライナー力(りょく)」の進歩を感じた。

 「後で整理する」という発想は本書を読んだことではじめて得られたものだ。このことだけでも大いに価値があった。

 一方、ブログ記事などを書く時は、どうしても前後(上下)のトピックに書くことが引っ張られてしまっているような感覚がある。これが良いことなのか悪いことなのか、自分の中ではまだ判断がつかない。



 本書で学んだことを実践できるようになり、その効果を実感できるようになるとしたら、それはまだまだ先のことかもしれない。

 いずれにせよ、アウトライナーを使う上で必要を感じたら、折に触れて本書に触れてみたいと思った。

 ところでDynalistのスマホアプリ版の更新が2年くらい前から止まっているせいか、だんだん挙動が不安定になってきていて困っている。なにかいい代替ツールはないものか。Workflowyに有料登録するのが一番いいんだろうけども。