rhの読書録

読んだ本の感想など

苦手な読書が好きになる! ゼロからの読書教室 / 読書猿

 読書家として、ブログや学習法にまつわる本を執筆してきた「読書猿」氏による、「本との付き合いかた」「本との出会い方」ついての本。
readingmonkey.blog.fc2.com

 同じ著者による、ニンテンドーゲームキューブがごとき鈍器っぷりの大著『独学大全』。そこに収められた膨大な独学にまつわる知見の中から「本の読み方」と「本の選び方」のエッセンスを抽出したのが本書、という印象。

rhbiyori.hatenablog.jp

 過去作と内容が被っているから読む意味がないかというと、もちろんそんなことはなく、むしろテーマを限定したおかげでわかりやすく、手に取りやすく、そして読みやすくなっている。読書に長けたフクロウが読書の苦手な女の子にレクチャーする、という対話形式のフォーマットをで書かれており、すんなり頭に入ってくる。

 転読・掬読・問読といった読み方のテクニックや、図書館や百科事典、書誌を使った本の探し方といった、実用的な技術の話が多い。青空文庫の作品を朗読したものを無料で聴ける『青空朗読』の存在を本書で知り、早速使ってみたりした。小説と実用書、それぞれの必要性が説かれているバランス感覚もいい。

aozoraroudoku.jp

 書誌、というのは聞き馴染みがない人も多いかもしれない。自分も『独学大全』を読むまで存在自体を知らなかった。書誌とは、あるテーマについて書かれた本のタイトルを、辞書のようにまとめている本のこと。

 当時さっそく図書館でチェックしてみたんだけど、そもそも普段から自身の読みたい内容をよく理解せずに無知蒙昧な本選びをしていることもあり、上手く活用できなかった。おそらく書誌とは、論文を書く研究者とか、小説・伝記のような特定のジャンルを掘り下げるような一般書を書く作家が利用するものなんだろう。多分。


 読書を好きになるための「心構え」みたいなものを期待して本書を開いた人はちょっと肩透かしを食らうかもしれない。

 でも著者が披瀝してくれる様々な「技術」は、今でも読書が苦手だと語る著者の切実な工夫と努力の成果だ。それを知ることが「よし、自分も本を読んでみよう」という気持ちにつながることは大いにありうる。

 人がある行為を好きになるのは、大抵の場合、別の人がその行為を楽しそうにやっているのを見たり知ったりした時だったりする。「こうするといいですよ」みたいなアドバイスでどうにかなる問題ではなく、そういったアドバイスでお茶を濁していない分、本書はむしろ誠実だと言える。


 本の探し方に関して、あくまでも図書館などの古典的な(本だけに)方法を紹介していることにも注目すべきだろう。今だったらAmazonのサービスであるKindleやAudibleを紹介したほうが、読者にとってははるかにとっつきやすいはず。

 でもあえてそうしないのは、知というものが特定の企業などによって独占・コントロールされるべきものではない、という学術的に極めて誠実な態度によるものだ。と、自分は読み取ったんだけど間違ってたらゴメンナサイ。


 自分も読書は苦手だ。あらゆる行為を「快楽」と「苦痛」に分類するなら、読書は「苦痛」の箱に入るだろう。できれば1日中インターネットを見ていたい。でもそれだと「虚無感」という別の苦痛が生じてしまうので本を読むことにしている。

 そんな自分を、あらゆる手段を駆使して勉強に立ち向かっている著者(どんな手段かは『独学大全』を読めばわかる)と引き比べるのは不遜の極みに違いないのだけれど、別に読書するひとが全員読書好きなわけではないし、本を読む人が全員読書好きにならなければいけないわけでもない。

ふくろう*1 ほっほっほ。本なんか読みたい時に読めばいいんじゃよ。
女の子 それだったら私、本なんか読みたくない。
ふくろう まあ、それも人生じゃ。今、本から遠ざかっても、本は静かに待ってくれる。また読みたいときがやってきたら、そのときの理由で読めばいいだけの話じゃよ。

 その意味で本書のタイトルには多少の方便が含まれているかもしれない。そのかわり、もっと大事なこと、読書には様々なアプローチがあっていいというを示してくれている。

*1:ふくろうと女の子のセリフは顔のイラストで表記されている