ハインラインの『夏への扉』を読んだ。kindle(電子書籍)版で。
この小説が、古典SF小説としてかなり評価が高いということは前々から知っていた。最近では『バーナード嬢曰く。』などで名前が挙げられていたりもした。
それを今になって読む気になったのは、つい最近、小説家の高橋源一郎がラジオで「夏に読む小説」として幾つか推薦していた本のうちの一冊に、この『夏への扉』が入っていたからだ。
前半は株式や特許がどーのこーのという話が多くてちょっと退屈だったが、中盤からドンドン話が盛り上がっていき、かなり夢中になって一気に読んでしまった。
僕個人はSF的な描写に対してそれほど愛着が無く、そもそも1950年代に書かれた作品であるため、現代な視点から読むと未来的というよりは「レトロフューチャー」な印象が強かった。それはそれで興味深くはあるのだが、当時読んだ人が感じたようなワクワク感はあまり無かったと言えるだろう。
しかしそういった部分を抜きにしても、先を読みたいと思わせるストーリー展開が見事だった。ほとんど「お手本的」と言っていいほど。
いろいろと気になる部分もあるにはあるが、なんせ昔の小説だし、エンタメ小説だと思って読めばとてもクオリティが高いのは間違いない。
あまりにも「良い話」過ぎてストーリーそのものにのめり込むのは難しかったが、スゴく出来が良い作品に出会えた、という意味での感動は確実にあった(まるきり余談だが、先日公開された映画『シン・ゴジラ』を見た時も同じように感じた)。そういう意味で読んでよかったと思う。