はてブで見かけたマンガ「タテの国」を一気読みしてしまった。自分にしては珍しく、ネットの評価を見る前に感想を書けそうなので書く。
「2001年宇宙の旅(wikiや映画紹介本であらすじだけ知ってる)」のオマージュであり、おそらく「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(読んだ)」と、もしかしたら某ゲーム(ネタバレ防止のため名前を伏せる)へのオマージュでもあると思う。あと序盤の設定は「グラビティデイズ」っぽい。
かなりテクニカルなSF。というか自分のような造詣の浅い者からすると、こういうのってもう科学的なファンタジーだよね、という印象を常々持っているのだけれど、本作に関しては設定的な納得性はあるので特に問題は感じなかった。
各話にラストの「ヒキ」があり、読む人を引き付けるのが上手い。常に目標が示されるため読んでいて詰まりにくい。通して読むと若干胃もたれ気味ではあるけれど(何回落ちるねん、と心のなかでツッコんだこと多数)、全120話に対応した少なくとも119通りのヒキを用意したのは感嘆すべきこと。
さらにジャンプ+作品らしく随所に少年漫画的文法が用いられており、アツい展開が多い。ベースが少年少女の冒険物なので、わかりやすさが担保されている。
唐突なメタギャグが入ることが3ヶ所ほどあり、なにかの伏線なのではないかと深読みしてしまったが、特にそういうわけではなかった。
読み始めは、行き当たりばったりでどんどん設定盛ってるんじゃないかとちょっと疑念に思ったけれど、すべて読み通してみると、おそらく綿密に計算されていたのだろうという印象に変わった。作者は元々漫画原作をやっていた人とのことで、おそらく間違いない。
確かに「読める漫画」ではある。読みやすい。引き込まれる。リーダビリティーが高い。
ただ、単に「設定」と「漫画的文法」と「オマージュ」を叩きつけられただけという読後感が、今のところは拭えない。
昔のオンナに似たオンナがいっぱいでてくる、という展開なんかは、それこそ源氏物語の時代から使い古されている定番中の定番だし。
中盤のゴチャゴチャした展開にはこそむしろ文学性のようなもの、作者個人の情念のようなものを少し感じたが、終盤に至るにつれて保守的な方向に着地してしまったのがちょっと残念かな、と。
もっと端的に言うと、こんだけ(作中の)世界がムチャクチャになるんだったら、最後もムチャクチャになって欲しかった。風呂敷を広げて畳すぎた、というか。
これがもしハードなSF小説とかだったらそういう展開もあり得たかもしれない。自分はグレッグ・イーガンの短編くらいしか読んだことないからイメージで喋ってるけど。でも少年漫画としてはこれでよかったのかもしれない。
というのは作品に瑕疵があるというよりも個人的な好悪の話であって難癖に近いものだとは思う。もっと時間が経ったら感想が変わるかもしれない。