rhの読書録

読んだ本の感想など

ミュージック・ブレス・ユー!!/津村記久子 その1

ミュージック・ブレス・ユー!!

ミュージック・ブレス・ユー!!


相変わらずこの津村記久子さんというお方は小説がお上手。ウフフフ、お上手ですわね。
なんてお嬢様言葉で書き始めてしまうくらい感心してしまったわけで、その上手なポイント、秘訣、秘穴、秘密の穴について私考えてる、考えてる。
というわけでミュージック・ブレス・ユー!!第一章のよかった点をあげつらってみたいと覚ゆ。
まず書き出しが「みんな出ていってしまった」。えっ?なんで?と思わせる手法。これはエンターテインメントの基本ですね。始めに読者をぐっと引き込む。さらに、あえてショックな出来事を事後的に振り返る形で小説を始めている。これも、出来事をより印象的に描くための手法です。しかしまぁこれらはテクニックの一種であって、ある意味誰にでも出来るんですよ。
主人公は阪神カラーの歯科矯正器具をつけていて、そのことを罵られるシーン。実はそのカラーリングは歯科医の茶目っ気によるサービスであり…というような、くだらない事情が丁寧に描写される。
僕が感動してしまったのはその丁寧な描写だ。
何しろ日常というものは基本的にくだらないものだ。特に他人の日常など百パーセントどうでもいい、と普通の人は思っている。
ドラマ性のない日常をあえて描くことが素晴らしい、のかどうかは僕にもよくわからないが、なんだかよくわからない希望、愛情のようなものを、僕は感じてしまった。
あと、読み進めていくうちに登場人物のフルネームがだんだんとわかっていくタイプの小説は個人的にあまり好きではない。めんどくさいし。この小説もそうなんだけど、まぁ瑣末なことだよね。
というわけでレビューは続く、かもしれない。