- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2002/01/18
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
「アイエエエエ!?ナンデ!?」と、読むと思わず叫びたくなる。それが高橋源一郎の小説の特徴である。
それにしても、この小説はスゴイ。ほぼ全編が、AVの撮影現場の描写である。「文学的な抒情的文章表現」みたいなものも特に出てこない。内容も、SM、スカトロ、老女と、アブノーマルなものばかり。ついでに言えば、そんな本が「主婦と生活社」から出版されているというのも驚きである。
なんでも高橋源一郎は、実際のAV撮影の現場に密着取材して、それを元にこの小説を書き上げたそうである。実在のAV女優の名前も出てくる(「トヨマル」とか。古いので僕は知らなかったが、ググったら出てきた)。「大正生まれのAVギャル」シリーズも実在する。悪夢ではなく現実として。いやはや。
月並みな言い方をすれば、この作品は、作者のアダルトビデオというものに対する、愛の炸裂、なのだろう。
しかも、ただの投げっぱなしな炸裂ではなく、結末の展開において、作者は読者を現実に引き戻そうとする。「俺らが日々見ているAVって、いったいなんなのだろう」と、これまた月並みな言い方だが、読者に考えさせようとするのである。少なくとも、僕の中でのAV観は、この本のせいでガラリと変わってしまったと感じる。具体的にどこが、というわけではないけれど。
傑作であると同時に、問題作でもある。この本をうっかり知り合いの女性に見せた場合、セクハラで訴えられても当方としては一切の責任を負いかねる。あと、特に単行本のカバーは、ストレートに18禁なので、取扱に注意が必要。電車内で読むなら文庫版をおすすめする。って、タイトルの時点でダメか。
それから、つい最近出たユリイカ七月号に、川上弘美と高橋源一郎の、性と小説にまつわる対談が載っている。個人的にタイムリーな感じ。
- 作者: 川上弘美,高橋源一郎,窪美澄,山内マリコ,村田沙耶香
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2013/06/27
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (1件) を見る