なにかお金を使わず自分の好きなことだけをして時間を潰したい、と考えた結果、『HUNTER×HUNTER』暗黒大陸編を読み返すことにした。現在37巻までコミックス刊行中。
一般的に暗黒大陸編と呼ばれるが、厳密に言うとまだ暗黒大陸に到達していないので、王位継承編とでも呼んだほうがいい気がする。
なにはともあれ、とにもかくにも文章が多いのが暗黒大陸編。
権謀術数が渦巻く船内で、名前ありキャラ推定100人超(数えたわけではない)の思惑が交差する群像劇。
未だに内容が頭に入りきっているとはとても言えない。情報量が多すぎる。
おそらく読者が自力で「時系列に沿ったキャラクターの行動表」を作成しなければ、100%楽しむことはできないのではないか。そんな気さえしてくる。世界中で全てを把握している人は2桁人くらいしかいないのではないか。
ページを開いた瞬間、文字の多さに辟易する人がいてもおかしくない。そういう漫画をどう評価すべきか。正直、自分の中での評価はまったく定まっていない。
しかしそれはそれとしてめちゃくちゃ面白い。
心理戦とドラマチックな展開の連続。
「スゲェ!」と「今何やってるんだっけ?」の波状攻撃が襲ってくる。それが暗黒大陸編。
とにかく「数を多くすること」。それが作者冨樫義博の、現在の挑戦なのではないか。そんなふうに見えてくる。
ヒソカVSクロロの戦いも大量の群衆をクロロが利用してヒソカを追い詰める展開だったし。
もしギネスブックに「顔と名前のあるキャラの登場数」の項目があったらHUNTER×HUNTERが認定されるかもしれない。いや、他にも上があるか。長期連載の1話完結もの、具体的にはゴルゴ13とか。
膨大な文字数の殆どは、登場人物の心理描写であり、心の声だ。
しかしそもそも現実の人間は、はそんなに頭の中でものごとを考えているだろうか?
現代人は、SNSの発展によって大量の情報にさらされるようになったが、ただ受け取っているだけで、全然消化しきれず、むしろ目に映った情報に直接的に反応するだけになってやしないか?
なんてことも考えてしまう。
脳内描写の乱打によって「頭を使って考えること」の復権を目指しているとしたら、それもまた漫画の歴史に残る挑戦になるだろう。