- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2011/01/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『ゆるく考えよう』を読んでから、ちきりん本を全部読むことに決めた。なぜなら、面白そうだから。
こう書くと、僕がちきりん女史の思想・信条に賛同しているとか、個人的にリスペクトしているととられかねないがそうではない。単純に、言ってることが独特でおもしろいから読むのであって、本の主張そのものは(『自分のアタマで考えよう!』とかは)わりとどうでもいいと思っている。
今回読んだ『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう』の前書きでは「フィリピンのレストランで紅茶を注文すると、カップに入れたお湯とリプトンのティーバッグが出てくるのはなぜか?」という話が出てくる。まるで「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」みたいである。
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2012/05/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その答えはすぐ後に書かれていて、読むと「なるほど!」と思う。その後も読み進んでいくと、「日本と異なる風習や文化と出会う→ちきりんが『自分のアタマで』そうなっている理由を考える」というパターンが何度も出てきて、それがおもしろいのである。なんというか、知的におもしろい。
知的、という話で言うと。ちきりんという人は、言わば典型的な知的エリートである。普通、知的エリートというのは、自分の頭が余人と比べて圧倒的に優れているということに気づいており、その頭の「優れ」を他人に見せびらかせば尊敬を得られるだろう、と考えて本を書くものなのではないかと思う。そういう本は読まないから詳しくは知らないけど。
しかるにちきりんは、その「優れ」を決してひけらかさない。むしろ細心の注意を払って、知的なニオイを消している。それを「あざとい計算」と呼ぶか「販売戦略」と呼ぶか「ことばを届けるための努力」と呼ぶかは人それぞれだろう。
しかしちきりんのブログが一定程度の支持を得ているということは、その態度が一定程度の支持を得ていることの証拠であると見て差し支えないのではなかろうか。
本書の中にもそういった謙虚さが見て取れる。あくまでも、自分が海外旅行を通じて見たり聞いたりして考えたことを中心にしているため、読んでいて新鮮でイヤミがない。「イースター島は草原と海岸が隣り合わせになっているので『地球』を感じられる」といった、彼女ならではの視点に思わず唸らされるのである。
一方で、「ちきりん?ケッ!』と思う人の気持ちも、わからないではない自分もいる。
知的な己をひけらかさない、という態度が、「これくらいのこと、みんなできて当然でしょ?」みたいなオーラを醸し出してしまっているように感じる。このへんのことはあくまで感覚なので上手く表現できないのだが。
そもそもちきりんほどの頭の良い人物が、「自分自身が例外的に優れたバックパッカーでありコミュニケーション強者である」ということに気づかないはずはないのだが、そのことに触れる気配はない。いや、もしかしたら、意識的あるいは無意識的に、そのことに気づかないようにしているのだろうか?うーん。
どっちにしてもおもしろいと思う人にとってはおもしろい本なんだけど、これをおもしろいと思う自分とは一体なんなんだろうか、ということについてなぜか考えさせられてしまう、それがちきりん本の魔力なのかもしれない。単に僕がひねくれているからそういう読み方になるだけの可能性大。