表紙と本文をチラ見して、面白そうな本だなぁ、と思って手に取ったのだけれど、以前ポケモンの名前の研究でバズって、ライムスター宇多丸のラジオにも出ていた人だということに後から気づいた。
最近はラジオきっかけで本を選ぶことが多かったが、逆パターンは初めてかもしれない。
著者が言語学者としてどのような研究を行ってきたかを、留学や家族関係など様々な体験を交えつつ、大変ライトな語り口で、しかしなかなかディープな内容まで踏み込んで語る本。
いきなりメイド喫茶のメイド名の研究から話が始まるのには少々面食らったが、読み進むほどに著者の誠実な研究と、言語学の面白さが伝わってくる。
プリキュアの名前は両唇を合わせて発生する「両唇音」が多いとか、日本語ラップダサい論に反論するために本気でラップを研究したりとか、言語学をものすごく身近に感じられるトピックが満載されている。
連濁の法則や外来語のカタカナ化など、日本語の仕組みについての話はとても興味深くタメになった。「にせたぬきうどん」と「にせだぬきうどん」違いとその理由をいつでも説明できるように覚えておきたいなと思った。
とにかくどの話も、自分のような素人にとって興味深い知見で満ちている。それは最後の章で書かれているような「自分の学問を世の中の役に立てたい」という著者の姿勢があるからだろう。
知識とはいわば素材であって、素材をどう役立たせるかは使う人の腕にかかっている。言語学の知見を役立たせることを常に意識し行動している著者の活動には尊敬の念を禁じえない。マジリスペクト。