rhの読書録

読んだ本の感想など

餓鬼道巡行/町田康

餓鬼道巡行

餓鬼道巡行


買い物、買い物、銭がねぇ、買い物、なんつってた町田康が、こんだ、外食の本を書いたんだってさ。へぇ。すごいね。
などと文体引きずられまくりングの書き出しで申し訳ない。いや、ホント。
とかくこの世には理不尽というものが多すぎる。豚の餌みたいなインスタント料理に取り澄ましたシェフの顔をプリントしただけのものがメディアに取り上げられ大流行したりする。居酒屋の店員は客を見て接客態度をコロコロ変える。
この世のあらゆるものが理不尽であるということは、この世に生きる自分自身もまた、理不尽であるという宿命から逃れられない。うっかり頼んだ料理がどう見ても不味そうなのに、それをなかなか現実として認めることが出来ず、これは禅の境地なのだ、と訳のわからぬ言い分を持ちだして自己弁護。
なぜそのような理不尽は無くならないのか、どうしてそういうダサいこと、残念なこと、わけのわからぬことが起こってしまうのか、というと、私が思うにそれは我々個々人の欲、欲望、自分自身をええ感じにしたいという執着、が原因なんじゃないかなぁ、と。メイビー。
だからといってその執着とやらをぽいっとクズ紙感覚でゴミ箱に捨てられるかというと、そうは問屋が卸さない、「こだわり」の名店を求めて餓鬼共が今日も巡行、うちの近所のラーメン屋の行列も無くならないわけである。我々は餓鬼である。名前はまだない。
とまぁこんなふうに斜に構えて「川越シェフがオスプレイになった照英とオスプレイしている画像ください」とインターネッツの掲示板にカキコするだけなら僕にだって出来る。しかしそこにとどまらないのがこの本の作者・町田康の好ましいところ。自ら「外食ちゃん」となり餓鬼道を経巡るのである。いや、もちろん、文章上の話だよ。さすがにヤーさんににボコられたりはしてないと思う。