rhの読書録

読んだ本の感想など

国境の南、太陽の西/村上春樹

村上春樹全作品 1990?2000 第2巻 国境の南、太陽の西 スプートニクの恋人

村上春樹全作品 1990?2000 第2巻 国境の南、太陽の西 スプートニクの恋人


実はまだ読了していない。
なぜかというと、途中まで読んだところでなんだか気分が悪くなったからだ。
この小説は元々『ねじまき鳥クロニクル』の一部として含まれていた。最初に書き上げられた『ねじまき鳥クロニクル』が、一つの小説としてはあまりにも多くの要素を含みすぎていたため、主人公の過去に当たる部分を抜き出し、抜き出した部分を元に膨らませたものが『国境の南、太陽の西』になった。
と同時に、『国境の南、太陽の西』のモチーフは短編『我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史』のそれに近い。どちらも「過去の情念」のようなものが物語を動かすテーマとなっている。(僕の書いた感想文はこちら我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史/村上春樹 - 思考だだ漏れノート
『我らの時代のフォークロア』では「過去の情念」は永遠に失われてしまう。かつてのガールフレンドとの再会と別れによって。でも、『国境の南、太陽の西』における「過去の情念」すなわち島本さんは再びやってきて主人公を大いに揺さぶる。多分。流し読みしかしてないからわからないけれど。
で、話を戻すと、読んでて気分が悪くなった理由はけしてつまらないからではない。
なんだかものすごい不吉な予感がしたからだ。正確に言えば、主人公の「ハジメ」にものすごく恐ろしいことが起きるような予感がしたからだ。小説技法的なことを言えば、そういう複線がちゃんと張られている。
そしてネットであらすじを調べたところ(いいのか、それで)、実際に恐ろしいことが起こる。村上春樹お得意の、「此岸と彼岸の往復」に、しっかりと「ハジメ」も巻き込まれる。恐ろしい。
あるいはこれは別の意味で恐ろしいことかもしれない。『ダンス・ダンス・ダンス』ではあれほどの文量を割いた
「此岸と彼岸の往復」を、この中長編の小説でやってのける。そこにシビれる!あこがれるゥ!じゃなくて。
そんなんだから、僕も心の準備が足りないというものである。「羊の部屋」とかに行くにしても、もうすこし事前の説明とか旅支度とかが欲しい。体がうまくなじめず拒否反応を起こしてしまうではないか。
だから僕はもう少し心の準備をしてから、この小説をじっくり読もうと思う。読んでからちゃんと感想を書こうと思う。