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勝負論 ウメハラの流儀 / 梅原大吾

勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)

勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)

 前著『勝ち続ける意志力』が「プロゲーマー・梅原大吾はどのようにして生まれたか?」という本だったのに対し、この『勝負論』には「勝ち続けるために日々どのようなことを実践しているか」ということが書かれている。

 「目先の勝ちにこだわるな」とか「自分の成長を重視しろ」とかいろいろなことを言っているが、要約すれば「地道に頑張れば勝てる」という、そりゃそーだという話になってしまう。しかし格闘ゲームというジャンルにおいて「地道に頑張る」というのは、なかなかどうして大変なことなのだ。

 本書の中でも何度も触れられていることだが、格闘ゲームでは数年ごとにゲーム内容に調整が入るのが常である。つい先日も、ウメハラが主戦場としている格闘ゲームタイトル『ウルトラストリートファイター4』の調整内容が発表されたところだ。

 ゲーム内容に調整が入るということは、「その調整内容における強力な戦術・戦法」をいち早く見つけ出せば、圧倒的に勝てるようになる。簡単に言えば「早い者勝ち」の世界。ある面で、格闘ゲームとはそういうゲームなのである。

 でも、そのような攻略情報は、ネット時代の現代では文字通り光の速さで伝搬され、誰でもマネできるようになる。すると、格闘ゲームは「情報」ではなく「実力」を競うゲームに変わってくる。そしてその段階に至って、ようやくウメハラのような実力のあるプレイヤーが結果を残せるようになるのである(というのは少々単純化した説明であって、実際のところ、そんじょそこらのプレイヤーと比べればウメハラも初期から勝ちまくっているわけだが)。

 例えるなら、ホリエモンが六本木で数百億円を稼いでる隣で、せっせと昔ながらの農業に励む、みたいな努力をウメハラはやっている(と、本人は言っている)わけで、「プロゲーマー」という聞きなれない響きとは裏腹な地道さが、ウメハラの本がビジネス界隈の人にウケている理由なのではないだろうか。穿った見方をすれば、そのような路線でウメハラを売り出した小学館の成功である、とも言える。

 正直に申し上げると、こういった自己啓発書のたぐいは好まない、というか身体が受け付けないのだが、ゲーマーが書いた本がこれほど広く世間に受け入れられているというのは素晴らしいことだし、格闘ゲーム愛好家の端くれである自分としてもなんだか嬉しい。梅原氏の今後の活躍に期待したい。ガンスリ。