近所の本屋で表紙を前にして陳列されていた(そーいうのを面陳列というらしい)マンガ、『バーナード嬢曰く』。面白そうだったので買って読んだら、期待以上に面白かった。表紙買い大成功である。
帯文によると"読書家あるある"をネタにしたマンガ、とのことだったが、読書要素抜きでもギャグマンガとして極めて面白い。一コマで笑わせる瞬発力とコマ割りを駆使したテンポの良さを兼ね備えていて、いつまでも読んでいたくなる。一見「ヘタウマ」にも見える、デフォルメが効いていた独特のタッチでシュールなボケをかます登場人物たちはどれも愛らしい。ちなみに僕は「バーナード嬢」というタイトルから、主人公がお嬢様なのかと思っていたが、実際は普通の女子高生です。
個人的にツボだったのは『百年の孤独』および『罪と罰』をネタにした、追加ページの一コマ漫画。この二冊を読もうとして挫折した経験がある自分としては、まさに「100%のあるある」で、苦笑交じりの大爆笑。
作者はなかなかのSF小説好きらしく、作中でSF好きキャラの神林さんが熱くSFを語るシーンが出てくるが、SFファンでない僕でもネタとしてちゃんと楽しめた。っていうかこのマンガ自体、普段読書しない人が読んでも十分面白いハズ。
面白さのヒミツは、読書というものが持つ権威をネタにしているから、ではないかと思う。
本を読む、という行為とは、文字の連なりである文章を読み、時々絵や写真を見るという、言ってしまえばただそれだけのものでしかない。
しかしいつの頃からか、読書には「文化的」だとか「教養」だとかいうような、社会的な意味がついて回るようになった。要するに「本を読むのはエラい」と言われるようになったのである。
本当に読書がエラいのか、というのは置いといて、実際に読書を愛好している人々の多くは、読んでいないのに読んだフリをしたり、登場人物の名前が覚えられないという理由で読むのをやめたり、内容そっちのけで海外SFの邦訳タイトルのかっこよさについて語り合ったりしている。案外テキトーなのである。
そこのところのギャップを、腐すことなく笑いに転化するのは、なかなか出来ることではない。それを一見やすやすとやってのけているのだから、もはやスバらしいとしか言いようがない。
後から知ったことだが、この作品と『オンノジ』『鬱ごはん』の3作品が認められて手塚治虫賞を受賞したとのこと。納得。読書が好きな人、およびマッタリとしたギャグマンガが好きな人にはぜひオススメなマンガである。
- 作者: 施川ユウキ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2013/04/19
- メディア: コミック
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