- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 40回
- この商品を含むブログ (79件) を見る
僕は、言葉を使うことに全く自信が無い。それは高橋源一郎のせいだ。と言うと、説明が不足している。
大学を卒業する前後から、僕は言語が不自由な感じになった。言葉を喋ったり書いたり読んだりすることに、困難を覚えるようになった。
単なるストレス過多の症状だったのかもしれないが、それ以来上手く言葉を使えているのかいないのか、全く自信が無いのだ。そして、そのような感覚・概念を知ったのは当時読んでいた高橋源一郎の『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を読んでいたからだった。
極めて月並みな言い方だけれど、言葉を使うことは絶望的に困難だ。
特に僕がそう感じるのは、自分が発している言葉や自分の読解に、なんらの根拠・裏打ちが無いことが原因ではないかと思う。根拠。バック・ボーン。権威付け。「大きな物語の終焉」。またしても月並みだけれど、そんなような障壁の存在を感じずにはいられないのだ。
それが僕の屈折した同一化だとしても、高橋源一郎の文章は刺激的だ。この本で引用されている中沢新一なんかを、今のところ僕は単なる胡散臭い人だとしか思っていないけれど、一つの感動として体験として興味深く最後まで読めた。
「なんだかよくわからないものを文学と呼んでありがたがっている」という高橋源一郎に対する評価は、当たらずとも遠からじと言った感じだけど、そんな批判はどーだっていい。文学なんてありがたくもなんともないし(逆説的にしか聞こえないなぁ)。高橋源一郎の射程は常に「言葉」にあるんだし。
文学、小説、言葉というものが、ますますなんだかよくわからなくなる、そういった意味でオススメの一冊。