rhの読書録

読んだ本の感想など

ニッポンの小説―百年の孤独/高橋源一郎

ニッポンの小説―百年の孤独

ニッポンの小説―百年の孤独


 僕は、言葉を使うことに全く自信が無い。それは高橋源一郎のせいだ。と言うと、説明が不足している。


 大学を卒業する前後から、僕は言語が不自由な感じになった。言葉を喋ったり書いたり読んだりすることに、困難を覚えるようになった。


 単なるストレス過多の症状だったのかもしれないが、それ以来上手く言葉を使えているのかいないのか、全く自信が無いのだ。そして、そのような感覚・概念を知ったのは当時読んでいた高橋源一郎の『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を読んでいたからだった。


 極めて月並みな言い方だけれど、言葉を使うことは絶望的に困難だ。


 特に僕がそう感じるのは、自分が発している言葉や自分の読解に、なんらの根拠・裏打ちが無いことが原因ではないかと思う。根拠。バック・ボーン。権威付け。「大きな物語の終焉」。またしても月並みだけれど、そんなような障壁の存在を感じずにはいられないのだ。


 それが僕の屈折した同一化だとしても、高橋源一郎の文章は刺激的だ。この本で引用されている中沢新一なんかを、今のところ僕は単なる胡散臭い人だとしか思っていないけれど、一つの感動として体験として興味深く最後まで読めた。


 「なんだかよくわからないものを文学と呼んでありがたがっている」という高橋源一郎に対する評価は、当たらずとも遠からじと言った感じだけど、そんな批判はどーだっていい。文学なんてありがたくもなんともないし(逆説的にしか聞こえないなぁ)。高橋源一郎の射程は常に「言葉」にあるんだし。


 文学、小説、言葉というものが、ますますなんだかよくわからなくなる、そういった意味でオススメの一冊。