- 作者: 保坂和志
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/04/21
- メディア: 単行本
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とにかく、今はおかしな時代なんだから生きにくいと感じないほうがおかしい。生きにくいと感じている人の方が本当は人間として幸福なはずで、その人たちがへこんでしまわないように、私は自分に似たその人たちのために書いた。
(『途方に暮れて、人生論』あとがきより)
読むにつけ、保坂和志という人は、いわゆる「偏屈」であると感じる。と言っても、彼が偏屈なのはエッセイの中だけで、小説作品についてはむしろ正反対であるように感じる。
偏屈である、という言葉がネガティブな意味を持つのはなぜだろうか。偏っている、屈折している。つまりふつうのカタチと違うから、ハミ出しているから、偏屈はよくないとされるのだろう。
保坂和志が書いていることは、一見、単なる世間嫌いのオジサンのグチに見えなくもない。しかし、ただのオジサンと違うのは、世間だとか常識だとかいうものを乗り越えてやろう、という、確かな意志があるということではないだろうか。
彼のエッセイの多くがそうであるように、この本も「記憶」と「思考」と「疑問」で満ちている。何かを思い出す。何かを考える。そこに新たな問いが生まれる。そんな風にして思考を積み重ねていく。
考えるということはとても大事だ、と思う。でも、あまりに考えすぎると、考える事自体が目的になってしまっているんじゃないか、と思うときがある。不安になる。
そんなことを考えてしまう僕にとって、保坂和志という人の存在は心強い。まぁ、この人の小説はあんまり読んだこと無いんだけど。そろそろ挑戦してみたい。