rhの読書録

読んだ本の感想など

ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門 / 宇多丸 高橋芳朗 DJ YANATAKE 渡辺志保

 先日ヒップホップの歴史の本を読んだので、さらに続けて知るために手に取ったのが本書。

 2018年1月にNHK-FMで放送されたラジオ番組「今日は一日"RAP"三昧」という番組を書籍化したもの。

 普段からライムスター宇多丸のラジオをちょくちょく聞いているのでちょうどいいな、と。



 アメリカのヒップホップの歴史と並行する形で日本のラップ史を紹介していく形式をとっているため、日本のラップがどのようにアメリカの影響を受けてきたかがよくわかるようになっている。

 歴史の本だけあって出てくる固有名詞が多いが、トーク形式なのでサクサクと読んでいけるのが良いところ。

 いとうせいこう、スチャダラパーBose、Zeebraといった日本ヒップホップ史の生き証人を迎えたインタビューもあり。

 なによりライムスター宇多丸自体が日本のヒップホップ第一人者のひとりなのであるからして、これほど歴史を語るのにふさわしい場は無い。

 共にパーソナリティーを務めた高橋芳朗が、番組で流した曲のSpotifyプレイリストを公開している。流しながら読めば理解度倍増。



 多くの音楽ジャンルには、定期的に原点回帰のムーブメントが起こる。

 例えばロックの場合、どんどん技術的に高度化、洗練化していく流れに対して、よりシンプルで衝動的なサウンドが揺り戻しとして出てくる。パンクロック、グランジ、ガレージロック・リバイバルなど。

 対してヒップホップにおいては、定期的に「ワル」の方への揺り戻しが起こっているように見受けられる。ヒップホップにおける原点はやはりパーティー、ゲットー、そしてドラッグカルチャー、さらにそこからの「成り上がり」なのだろうか。

 そういった光を当てにくい部分を取り扱うボリュームは少ないと感じた。NHKだからしかたない面はあるが。

 またラップの技術的な側面もあまり扱わない。確か以前チラッと立ち読みした「ラップのことば」という本が日本語ラップを解析的に扱っていたと思うのでそちらを読んだほうが良いのではないかと思う。

 かつてのような「アメリカ文化の輸入」というモードが薄れてきている昨今。果たしてヒップホップはどうなるのか。そんなことにも思いを寄せたくなる一冊。